【入学試験情報】紅野学部長より受験生のみなさんへ

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【入学試験情報】紅野学部長より受験生のみなさんへ

2021.01.08

 受験生のみなさんへ

文理学部長 紅野 謙介

  2021(令和3)年を迎えました。すでに元旦から8日をすぎましたが,あらためて新春の祝詞を申し上げます。

しかし,この時期,受験生のみなさんは心の落ち着かぬ日々をすごされていると思います。東京都では年末にCovid-19による陽性者数がついに一日あたり1,300人を超え,年が明けてからも1,000人から2,000人超という数字が報じられています。埼玉県,千葉県,神奈川県でも類似した状態がつづき,昨日,一都三県に限定されていますが,緊急事態宣言が政府から再発出されました。大学入試センターによる共通テストや,各大学の入学試験を控えているみなさんとしては,こうした情勢にどうなることかと不安と焦りを感じておられることでしょう。

  文部科学省は,緊急事態宣言のもとでも,計画通り,共通テストは実施すると明言しました。日本大学文理学部も,11617日の両日,共通テストの試験会場としてキャンパスを提供することになっています。さらにそのあと,23日,4日,28日の文理学部の一般入学試験をはじめ,各種の入学試験,大学院入学試験等が予定されています。もちろん,いかなる事態になるか,予断を許さない情勢ではありますが,私たちとしては,日程通りに実施していく予定です。大学入試センターをはじめ,文部科学省や厚生労働省の指示やガイドラインにしたがって,感染予防に十分配慮しながら,みなさんに安心して受験していただけるよう,最善を尽くします。学部の一般入試について,万が一,何らかの変更があった場合は,学部ホームページにすみやかに情報を掲げるので,日々,注意していただくとともに,慌てずに試験準備にいそしんで下さい。

  むしろ,これからみなさん自身の感染予防がますます重要となります。人混みを避け,マスク,うがい,手洗いを欠かさず,毎日の検温もつづけましょう。試験日までは,必要最低限を除いて外出は控え,予防につとめるとともに,心の安定を目指しましょう。それでも感染することがあるかもしれません。その場合,共通テストは別日程へ,学部一般入試も第2期入試への変更など,可能な範囲で代替策を考慮しますので,すみやかに文理学部までご連絡ください。できるかぎりご相談に応じていきます。

  もちろん,自分たちがなんでこんな目にあわなければならないのか,抑えがたい憤りをため込んでいることと思います。私たちも同じです。しかし,怒りや焦りの感情に身を任せないこと。そして今まで学んできたことを思い出しながら,想像力を広げてみてください。

明治維新のとき,幕府が崩壊して御家人たちはいっぺんに失業し,よりどころを失いました。樋口一葉の父親は甲州の農家の出身でしたが,母親と駆け落ちして江戸に出て来たあと,一生懸命に働き,ためたお金のすべてを出して武士の身分をようやく買いました。その直後に幕府は崩壊したのです。新たな明治政府を作るために命を削った人たちも攘夷のつもりが,いつのまにか政府は開国に転じ,革命をなしとげた士族は廃刀を命じられました。彼らにとっては不本意きわまりないことだったでしょう。

 昭和前半の軍国主義の時代には,民主的なことを口にしただけで,特別高等警察に逮捕されました。獄中で亡くなった人もいます。反対に一億玉砕の方針を信じ,死を覚悟してすべてを犠牲にしていたら,国体を守るという名目のためにいつのまにか終戦の詔が発せられ,今度は自分たちで勝手に生きよと言われた世代の人たちもいます。

 不条理なことは,歴史をふりかえれば切りがないのです。日本だけでありません。世界中がそうです。ジェノサイドや宗教弾圧,自然や人為による数え切れないほどの災害。虐待される子どもたちはその人生の始まりにおいてこの家族に産まれた運命を呪ったことでしょう。やりきれない,腹立たしい。他の人たちではなく,なぜ自分がこの運命なのか,天を呪い,地に憤ったことと思います。

 しかし,何もない,ふつうに生きられる生活こそ稀有なケースなのです。むしろ,この不条理な現実をいったん受け入れていきましょう。そしてその上で,不条理のなかに,避けられないものもあれば,明らかにもっと低減できるものがあることを見きわめ,いかにしたらその被害を減らせるかを考えていきましょう。

  このコロナ禍の被害も,もっと小さくすることができたはずです。予防体制が台湾ではすみやかにできたのに,なぜ日本にできなかったのか。基礎研究を削るかけ声のなかで,日本の感染症研究の予算やサポートは十分だったのか。医療崩壊の前に,もっと医療体制を充実させる政策はなかったのか。不足しているといわれる看護師の雇用環境はこれまで納得のいくものだったのかどうか。結果的に不条理を増幅させてしまった社会的条件や制度の問題点を見出すのが,学問の力です。そして大学こそ,改善のためのこうした思考力や問題提起の力を身につける場所ではないでしょうか。自分たちのいまの不運を呪い,憤るのは正しい。しかし,そこで終わるのではなく,なぜ,こうなったのか,どうすれば変えていけるかを真剣に考えていきましょう。

 私たちは,みなさんがこの不運を乗り越えて,新たな学問のアリーナに加わることを求めています。日本大学文理学部には,人文・社会・自然の3つの分野にわたる学問がそろっています。その学問をたずさえ,地球規模で起きる災厄に対して持続可能な社会を求め,みずからの知性と想像力,実践力を鍛えることを目指しています。この学部で,共に新たな学びを作っていきましょう。不条理な世界を少しずつ変えていく仲間を増やしていくこと,それが日本社会を変えることにつながります。

 じっくり落ち着いて,試験に臨んでください。ふだんどおりの実力を発揮できるようにしましょう。これからも私たちは,心よりみなさんとお会いできることを期待し,十分な感染予防対策をとって最善の準備を整えていきます。

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