日本大学社会学会『社会学論叢』第1372000年3月)200212月)所収

社会調査の研究と教育をめぐる近年の諸動向 −英語圏(特に英国)と日本を中心として−

Recent Trends in Study and Teaching of Social Research : UK and Japan

後 藤 範 章

                                  

 1.日本社会学会の「社会調査」関連ニュースから

 

 近年の我が国社会学界において、「社会調査」は、個別専門領域を横断して論議を呼び起こす一大関心事となっている。

 試みに、日本社会学会の「日本社会学会ニュース」に掲載された「社会調査」関連の取り組みや出来事を時系列的に拾ってみよう。期間を、蓮見音彦氏が会長に就任した199711(「ニュース」では98129日発行のNo.162)以降に限って列記してみると、以下の通りである(一部省略)

  No.163(98.4.30発行)−−【A】第71回大会(関西学院大学)におけるテーマセッション「経験のフィールドワークとフィールドワークという経験」のコーディネーター・山田富秋氏による趣旨説明より;「実際のフィールドワークを報告してもらうことによって、そこで『経験的なるもの』がどのように批判的に『見』られるのか、そしていかに記述できるのか、具体的に検討してみたい」。/【B】「社会学教育委員会関係報告」(倉沢進委員長)より;今後3年間に取り組むべき第1番目の課題=「社会調査士問題の総括」。

  No.165(99.1.30発行)−−【C】「社会学教育委員会関係報告」(倉沢委員長)より;「1999年度の活動としては、社会調査士資格の学会としての集約を図るステップとしてテーマセッションを予定している」。/【D】「日本初のデータアーカイブ・オープンのお知らせ」(佐藤博樹氏)より;「東京大学社会科学研究所附属日本社会研究情報センターが、SSJデータアーカイブを開設しました。社会意識や社会行動に関するデータセット(集計前の個票データ)を2次分析のためにコンピュータ処理可能な形で提供いたします」。/【E】「『社会・意識調査データベース(SORD)』作成プロジェクトに関するお知らせ」(新國三千代氏)より;「本(98)10月から、SORD作成プロジェクトのホームページを開設しました」。「調査概要の検索・閲覧がインターネット上から行えます」。

  No.166(99.4.26発行)−−【F】「社会学教育委員会関係報告」(倉沢委員長)より;「関西地区の社会調査士に関する取り組み状況の紹介と実施上の課題点」や「アメリカの複数の大学の学部・大学院における社会調査カリキュラムの検討結果」、その他の報告。「今年度秋の学会大会では」、「社会学教育と社会調査士資格問題」と題する「特別部会企画をまとめることで一致した」。

 ・No.168(00.1.31発行)−−【G】「社会学教育委員会関係報告」(倉沢委員長)より;「1010日午後に上智大学にて開催された(72)日本社会学会大会の特別部会」では、「会場が満員で入りきれないほどの盛況となり、委員一同、会員の強い関心を受け止めることができました」。

 ・No.171(01.1.31発行)−−【H】「社会学教育委員会関係報告(前期活動報告)(倉沢前委員長)より;「委員会として社会調査士資格化について検討の末、社会調査士資格認定協会(仮称)による資格認定を適当とする、このため協会設立準備会を発足させることを主内容とする報告をまとめ、理事会および蓮見会長に提出した」。「蓮見会長から次期理事会への申し送りとして、特別委員会を発足させ、上記報告をたたき台として社会調査士問題について検討することが要請された」。

 ・No.172(01.4.27発行)−−【I】第74回大会におけるテーマセッション「社会調査データの保存と2次分析への公開に関する現状と課題」のコーディネーター・佐藤博樹氏による趣旨説明より;「データアーカイブの設置(SORDSSJデータアーカイブ)や公開を前提とした社会調査の実施(JGSS)など、公開データを利用した2次分析による研究や教育を行うための環境が整備されつつあるが、残された課題も多い」。/【J】「第18期第2回日本学術会議社会学研究連絡委員会報告」(小川全夫・学術会議担当理事)より;「『社会調査士資格』の認定について、今後社会学研連でも審議することとなった」。「社会学研連主催のシンポジウム」を「今期3年のうちに2〜3回」、「開催する予定であり、『社会学教育』、『情報公開、個人情報保護、ITの時代における社会調査』、『グローバルとローカル』といった鍵概念が提示され、原案を検討することとなった」。/【K】「社会調査士(仮称)資格をめぐる『特別委員会』について」(大村英昭・庶務理事)より;「現・社会学教育委員会委員長直井優氏より提案された『特別委員会』が」、「正式に発足しましたので報告します」。/【L】「『社会調査士(仮称)資格問題に関する検討報告書』刊行のお知らせ」(事務局)

 ・No.173(01.9.10発行)−−【M】「第74回大会シンポジウムの概要:第1部会『社会調査の困難をめぐって:社会学の中の社会調査−その方法的反省』」(中河伸俊氏)より;「本部会は、社会学という学問における社会調査の位置やそれが抱える方法論上の可能性と困難、理論・フィールド・経験的分析の相互関係など、古くからあるが今なおアクチュアルな諸問題について」、「『社会調査の社会学』のスタンスから方法的反省を試みる」。/【N】「第74回大会シンポジウムの概要:第2部会『社会調査の困難をめぐって:社会の中の社会調査』」(櫻井義秀氏)より;「本部会では、社会学の様々な分野で調査研究を進められている方々に、調査で直面する困難にどのように向き合われているかを具体的に報告してもらう」。/【O】「社会調査士に関する特別委員会関係報告」(細谷昂委員長)より;「関連学会への働きかけについて」、「専門社会調査士資格要件と標準カリキュラムについて」、「科研費申請案の作成について」。

 ・No.174(02.1.31発行)−−【P】「研究活動委員会関係報告」(江原由美子・研究活動担当理事)より;「第74回大会は」、「一橋大学で112425日に開催され」、「シンポジウムは統一テーマ『社会調査の困難をめぐって』のもと、『社会学の中の社会調査』『社会の中の社会調査』の2つが開催されました」。/【Q】「シンポジウム1『社会調査の困難をめぐって:社会学の中の社会調査−その方法的反省−』」(赤川学氏)より;「近年、社会調査における『量的調査/質的調査』という二分法に対して疑義が呈されている。本部会は『社会調査の社会学』のスタンスから方法的反省を試みた」。「立ち見がでるほど盛況となったフロアからも質問が出て、活発な質疑応答が行われた」。/【R】「シンポジウム2『社会調査の困難をめぐって:社会の中の社会調査』」(櫻井義秀氏)より;「社会調査の意義が認識論・方法論的な問題から検討されるだけでは不十分で、調査対象者を含む社会における実践として、行為の意味、倫理・政治性も問われているのではないか」。報告者には、「現在の社会調査で何が問題として問われているのか、改善の方策を事例をあげて説明して」いただいた。/【S】「社会調査士に関する特別委員会関係報告」(細谷委員長・大村理事)より;「今後のスケジュールについて」、「200211月に大会総会で設立趣意書を提案」し、「2003年4月には認定機構を立ち上げ」、「2004年に資格認定を開始すること、などが確認された」。

 ・No.175(02.4.24発行)−−【T】「シンポジウムについて」(江原理事)より;「今年度のシンポジウムは2部会として編成することになりました」。「シンポジウム1『社会調査の制度化と社会学教育』()」。/【U】第75回大会におけるテーマセッション「社会学の『臨床』−調査倫理をめぐって」のコーディネーター・石川洋明氏による趣旨説明より;「実際の調査場面で経験した困難や打開の努力に関する情報を共有し、どのような方法・感性によれば調査対象に対して被害を与えず、メリットをもたらしうる調査ができるのかをともに考えていきたい」。/【V】第75回大会におけるテーマセッション「公開データを活用した社会調査−データ分析に関する教育の方法と課題」のコーディネーター・佐藤博樹氏による趣旨説明より;「公開データを利用した社会調査教育の方法に関して充分なノウハウが蓄積されている状況にはない。また社会調査教育に利用しやすい公開データも限定されている。こうしたことから本テーマセッションでは、公開データを活用した社会調査教育の方法と課題について議論したい」。/【W】「第7回理事会議事録:社会調査士に関する特別委員会」(直井優・社会学教育担当理事)より;「標準カリキュラムは、@現状との両立、A専門資格にふさわしい内容、B量的調査と質的調査とのバランス、を柱に検討を加えている。とくに、調査実習を加えるかどうかが論点となっている。次回委員会で調査倫理の綱領について検討予定である。データアーカイブを設ける方向で検討している」。

 

 2.「社会調査」への関心の先鋭化を促す「社会学的現実」

 

 以上の諸事項を整理すると、概ね次のような4つの項目にまとめることが可能だろう(( )は複数項目にまたがるものを示す)

 1) 社会調査のあり方や「困難性」の深化をめぐって−−A,(J),M,N,P,Q,R,U

 2) 社会調査士の資格化をめぐって−−B,C,(F),G,H,(J),K,L,(O),S,(T),(W)

 3) 社会調査データ・アーカイブの構築と2次分析をめぐって−−D,E,(I),(V),(W)

 4) 社会調査教育の見直しをめぐって−−(F),(I),(O),(T),(V),(W)

  1)に関しては、とりわけ200111月に一橋大学で開催された第74回日本社会学会大会での2つのシンポジウムが、「社会調査の困難をめぐって」という統一テーマに基づいて行われたことが特筆されよう。従来の社会調査のあり方に対する「方法的反省」が語られ、個々の研究者の経験や認識の共有化を図りつつ新たな模索を重ねていくことによって、益々度合いを強めている「困難な状況」(それは回収率/回答率の低下を引き起こす「調査環境の悪化」に直面している量的調査においてより顕著である)を乗り越えんとする日本社会学会の姿勢が示された、と見て良かろう。

  他方で、社会学「市場」の確保・拡大と社会学部/学科の生き残り(もっと大げさに言えば、社会学の市民権確立)をかけて、社会調査(ないし社会学)の制度化/社会化の動きを進めようとする日本社会学会の意志が端的に現れているのが、2)の「社会調査士の資格化」の動きである。これまでは、主に関西と四国のいくつかの大学が個別に資格を付与してきた「社会調査士」を、全国一律の基準・要件を設けて、公的な(社会的に認知され得る)資格に格上げしようというもくろみである。現時点で想定されているシナリオは、2003年4月に社会調査士資格認定機構を立ち上げ、翌2004年4月から社会調査士資格の認定を開始する、というもののようだ。これは、「社会調査」を「社会学」の専売特許として囲い込む試み、と捉えることもできよう1)。しかし、内部における「社会調査の困難」の自覚と、外部に向けての「社会調査の制度化/社会化」の動きは、社会調査を取り巻くアイロニカルな今日的状況(一方ではデータ収集・分析のための技法の精緻化が進んだり、社会調査の重要性を叫ぶ声が大きくなっているにもかかわらず、他方では「調査環境の悪化」が益々度合いを強めているという皮肉/逆説)が極めて的確に表現されている、と見なすことが可能である。

  3)の社会調査データ・アーカイブの構築は、1)の「困難な状況」の背中合わせに存する動きであると言って良い。後述するように、種々のデータ・アーカイブが整備され、2次分析(Secondary Analysis)の比重の高い欧米の社会学界に比して、我が国は大きな遅れを取っている。しかし、「社会調査(特に量的調査)の困難」がこうした動きを後押しし、SSJデータアーカイブSORDプロジェクトWebサイトが共に1998年に開設されるに至った。我が国においても、「実査(フィールドワーク)を伴わない社会調査」がいよいよ現実のものとなってきているのである。

  そして最後に、これらの結果として、4)の社会調査教育の見直し・再検討が連動する。1)「社会調査の困難」を最小化するには、2)「社会調査士資格」を制度化するには、また3)マイクロデータを用いての「2次分析」を取り入れるには、大学での社会調査の教育方法を再検討し再構築することが必然的に求められるからである。

 「社会学」の研究と教育に関わる者にとって、これらは決して無視し得ない「現実」を構成している。今、日本の社会学界において「社会調査」への関心が先鋭化する状況には、こうした「現実」が反映している。社会調査の研究と教育をめぐる近年の動向を検討しようとする意図と意味も、ここにある。

 

 3.英語圏における近年の注目すべき社会調査の諸動向

 

 目を欧米(わけても英語圏)の社会学界に転じることにしよう。上記した我が国の「現実」を先取りし、かつこれらに直接的・間接的に影響を与える諸動向がいくつも見て取れるからである。まず、筆者が注目するものを列記すると、以下の通りである。

 1) Grounded Theory Methodology / Methodsの着実な展開と定着

 2) 質的方法と量的方法との優劣論争の大幅な後退

 3) 単一の調査技法に依拠することからの脱却志向の高まり

 4) 質的調査法への再/新評価のより一層の高まり

 5) 質的データ分析とTheory Buildingへのコンピュータ・アシストの発達と洗練化

 6) 社会調査(量的/質的)データ・アーカイブの整備とSecondary Analysis の活性化

 7) Visual SociologyOne Branch of Sociologyとしての確立とVisual Research Methodsの普及

  1)Grounded Theoryは、日本では「データ対話型理論」(Glaser & Strauss, 1967=後藤・大出・水野訳, 1996)や「データ密着型理論」(佐藤, 1992, pp.74-75; Hill & Turner, 1984=丸山監訳, 1996, pp.148-149)などと訳されているが、言うまでもなく米国のGlaser & Strauss(1967)によって創始されたアイディアであり、調査研究の戦略/方法でもある。その後、彼ら自身による著書や編著も次々に発表されているが(Glaser, 1978; Strauss, 1987; Strauss & Corbin, 1990; Glaser, 1992, 1994; Strauss & Corbin, 1997)2)、DenzinLincolnが質的調査の方法・理論と成果を集大成したHandbook of Qualitative Researchの序文で「質的な革命の前線(the front of the 'Qualitative Revolution')」と位置づけているほど(Denzin & Lincoln, 1994, p.ix)、質的調査法に極めて大きな影響を及ぼしている。

 ここで思い起こされるのは、かつてC.W.Mills(1959)が、T.Parsonsに代表される「誇大理論(Grand Theory)」とP.F.LazarsfeldS.Stoufferらに代表される「抽象化された経験主義(Abstracted Empiricism)」を共に批判し、それらを乗り越えていくために社会学的想像力(Sociological Imagination)の復権を説いたことである。Grounded Theoryは、多種多様な(質的/量的を問わない)データ収集とデータ分析(データとの対話)を丹念に繰り返す中で中範囲の理論的枠組みを見いだし、「データに根拠づけられた理論」をシステマティックに発見・構築していくことによって、「実証なき理論研究」と「理論なき実証研究」のギャップを埋めていこうとするアプローチである。Milesの主張の実質化を図るもの、と受け止めることもできる。そして、このGrounded Theory Methodology / Methodsの定着・発展は、2)3)4)5)の動きとも密接に関連することとなる。

 2)の質的方法と量的方法の優劣をめぐる論争に関しては、英国における代表的な社会学事典の一つであるOxford Dictionary of Sociology"qualitative versus quantitative devate"の項目で、次のように記述されている(Marshall, 1994, pp.543-544)。要約すると、質的研究と量的研究との間に横たわる根本的な相違(認識論的なポジション、データ収集や分析の方法など)を背景とした社会学における方法論上の一大争点であり、この論争は現象学的な諸アプローチへの関心が高まり、自然科学的なモデルの調査への適合性に対する懐疑論が高まった1970年代に突出した。しかし、Michael Mann(British Sociological Associationの機関誌であるSociologyに発表された1981年の論文)による両者を調和する試み(全ての社会学的な調査は、幅広い'socio-logic'のフレームワークの内に包含され得るとの主張)がなされて、様相が変化していく。それ以降、論争は、両者が分岐することを支持するか、両者の結合(Combination)ないし調和(Reconciliation)が可能であるとみなすか(例えば、'Triangulation'というDenzinの戦略)の間を揺れ動いていくことになる。そして、Gary King et al.(1994)は、最近の重要な調停(Intervention)において、Mannに詳しく言及して、「社会科学的な調査には種々のスタイルがあるが、科学的な推論のロジックはただ一つだけである。良い量的な調査デザインのロジックと良い質的な調査デザインのロジックは従って、決して異なってはいないのである」と強調した。

 この記述を裏付けるかのように、1980年代以降、両方法のCombining, Linking, Mixing, Integratingの主張が特に英国で次々に表明され、現に試みられるようになっている(Fielding & Fielding, 1986; Bryman, 1988; Brannen, 1992; Punch, 1998; Taylor, 2000)3)。両方法の対立から対話への大きな流れを再確認しておきたい。

  3)は、2)を下敷きとして展開しているモノ(シングル)・メソッドからマルチプル・メソッドへという動きである(Denzin, 1970, 1978; Brewer & Hunter, 1989)。データの収集と分析にあたっては、質的/量的データを問わず、また質的/量的分析をも問わずに、使えるデータや方法は何でも使うという姿勢が強まっている。この点で、筆者が特に注目するのは、上でも触れたDenzin'Triangulation'である(Denzin, 1970, 1978)。これは、少なくとも3つ、望ましくはそれ以上のマルチプルなメソッドを用いて異なった視点と異なった知見を結合させ、真相を明らかにする試みである。

 Denzin(1970)は、a)Data Triangulationb)Investigator Triangulationc)Theory Triangulationd)Methodological Triangulationの4種類のTriangulationを提示する。a)は研究において種々のデータの情報源を使うこと、b)は別々の異なった調査者もしくは評価者を使うこと、c)は単一のデータセットを解釈/説明するためにマルチプルなパースペクティブを使うこと、d)は単一の課題を研究するためにマルチプルなメソッドを使うことを、それぞれ意味する(Janesick, 2000, pp.391-392; Macdonald, 2001, pp.208-209)。ここで1点留意しておきたいことは、米国のDenzinの提唱が1970年代になされているものの、英国において注目され受容されたのは1980年代以降のことであって、そこには10年以上のタイムラグが見て取れるという点である。上に見た'qualitative versus quantitative devate'の展開と事情が反映していると見て、差し支えないだろう。

  4)に関しては関連事項を上げていったら枚挙に暇がないほどであるが、ここで特に指摘しておきたいのは、Denzin & Lincolnによって編集されたHandbook of Qualitative Research1994年と2000年に出版されたという事実である。ハードカバーの1千頁前後の分厚な質的調査待望のハンドブックが、1994年に第1版が、わずか6年後に第2版が刊行された。第2版は5つのパートと41の章から構成され、扱われているトピックスとしては、EthnographyLife HistoryCase StudyParticipant ObservationInterviewEthnomethodologyPhenomenological StudySymbolic Interactionist StudyNarrative / Discourse AnalysisGrounded Theoryといった古典的・伝統的なものに加えて、Social ConstructionismFeminismCultural StudiesQueer TheoryClinical ResearchVisual MethodsMembership Categorization AnalysisAutoethnographyApplied EthnographyCritical Race TheoryTestimonioといった新しい事項(その多くが第2版で追加された)も取り上げられている。執筆者56人の所属機関別の内訳を見ると、米国47人、英国3人、オーストラリア3人、ノルウェー1人、香港1人、シンガポール1人となっているが、そのほとんどが英語圏の大学で教育を受けている点で共通している。このハンドブックは、質的方法への関心や評価のより一層の高まりに応じて、その方法論や認識論、調査戦略やフィールドが確実に深まり拡がっていることを我々に教えてくれる。

 5)質的データ分析とTheory Buildingへのコンピュータ・アシストの発達と洗練化(Fielding & Lee, 1991; Kelle, 1995; Fielding & Lee, 1998; Weitzman, 2000; Lewins, 2001)は、勿論コンピュータ・テクノロジーの発展とソフトウェアの開発に負う部分が大きいが、今日の質的調査のあり方に大きな影響を与えている点で注目に値する。

 Weitzman(2000, pp.805-806)は、コンピュタによって可能となるアシストとして次の14項目を挙げている。1.フィールドでの「ノートの作成(Making Notes)」、2.フィールド・ノートの「清書ないし転写(Writing up or Transcribing)」、3.フィールド・ノートの修正・拡張あるいは訂正といった「編集(Editing)」、4.後の検索を可能とするためのテクストやグラフィックス、音、ビデオの切片にキーワードやタグを付けるといった「コーディング(Coding)」、5.組織化されたデータベースにテクストを保つといった「保管(Storage)」、6.利用可能なテクストで関連性のある切片の場所を突き止めるといった「探求と検索(Search and Retrieval)」、7.互いに関連のあるデータ切片を結びつけたり、カテゴリーやクラスター、情報のネットワークを構成するといった「データの関連づけ(Data "Linking")」、8.より深い分析のための基礎として、データや理論あるいは方法の位相に関するリフレクティブな注釈を書き込むといった「覚え書き(Memoing)」、9.単語やフレーズの位置や順序、頻度を数えるといった「内容分析(Content Analysis)」、10.マトリックスやネットワークのような要約され組織化された形式でデータを配置するといった「データ表示(Data Display)」、11.表示されたデータの解釈と知見のテストないし確認を援助するといった「結論の引き出しと検証(Conclusion Drawing and Verification)」、12.系統だった、概念的に筋の通った知見の説明を展開したり、仮説をテストするといった「理論構築(Theory Building)」、13.知見や理論を描写するダイアグラムを作り出すといった「図形作成(Graphic Mapping)」、14.暫定的なそして最終的な「報告書の作成(Report  Writing)」。

 このようなアシストのために開発され多くのユーザに利用されているソフトには、CISAIDSIMSTATQSR NUD*ISTATLAS.tiHyperRESEARCHThe EthnographKWALITANWinMAXNVivoCTanksなどなど、既に多数存在する。そして、こうしたソフトの開発と利用を牽引し世界中のユーザを結びつけるているのが、後述する英国のサリー大学社会学科を結節点とするCAQDAS(Computer Assisted Qualitative Data AnalysiS)ネットワーキング・プロジェクトである。更にもう1点触れておきたいことは、ATLASNUD*ISTEthnographは、Grouded Theory Approachをアシストすることを目的に開発され数多くのユーザを獲得している代表的なソフトとなっている、ということである(Charmaz, 2000, p.520; Seale, 2000, p.168)3)のマルチプルなメソッドを用いて収集されたデータを5)のコンピュータ・アシストによって分析して、1)のデータ対話型理論を生み出していくという戦略・方向性が、今日、質的方法の一大潮流を形成していると言って良い。

 6)Secondary Analysis(2次分析)とは、「他の調査者ないし組織が収集した既存調査のマイクロデータを、分析者自身の目的のために再分析すること」(Arber, 2001, p.270)、「社会調査によって収集された公開データを再分析し、既存の仮説や新しい仮説を検証したり、あるいは新しい分析手法を適用」すること(佐藤ほか, 2000, p.1)である。米国では1970年代に(Hyman, 1972)、英国でも1980年代に(Hakim, 1982; Dale, Arber  & Procter, 1988)本格的な啓蒙書が刊行されているが(日本では、佐藤ほか, 2000)、2次分析が行われるためにはそれに供されるマイクロデータ(個票データ)が公開されていることが前提となる。米国のGSS(General Social Survey)、英国のBSAS(British Social Attitudes Survey)GHS(General Household Survey)、ドイツのALLBUS(ドイツ版のGSS)に代表される「公開データ」を組織的に収集・保管し、2次分析に供する機関がデータ・アーカイブであり、米国で1960年代に活動が開始されすぐにヨーロッパ諸国に広がった(これらに関しては、佐藤ほか, 2000で詳しく紹介されている)。社会調査のデータ・アーカイブはしかし、量的方法としての2次分析のためにだけ存するのではなく、後述する英国のエセックス大学のQualidataのように、今日にあっては質的データのアーカイブも存在し、質的研究にも活用されるようになっている。

  7)Visual Sociologyの確立とVisual Research Methodsの普及に関しては、1981年にThe International Visual Sociology Association(IVSA)が設立され活発な学会活動が展開している点4)と共に、絵画や映画、TV番組、ビデオ、地図、そして特に写真といったVisual Materialsを調査のTool / Data / Documentとして用いたVisual MethdologiesないしImage-based Researchが確立し定着しているという事実を指摘しておきたい。社会学と写真がほぼ同時期に誕生し、社会の探究に共に関与していることを論じたのは米国のH.S.Becker(1974, 1981)であったが、その後とりわけ英国でVisual Research Methodsが幅広く発展し活況を呈するようになっている(Ball & Smith, 1992; Chaplin, 1994; Prosser, 1998; Emmison & Smith, 2000; Lee, 2000; Banks, 2001; Rose, 2001)。また、Visual Materialsの分析には、Reflection TheorySemioticsContent AnalysisInterpretative AnalysisCombining Content and Interpretative Analysisなどが使われるのが一般的な傾向であり(Alexander, 2001, pp.344-349)70年代以降に顕著となった現象学的社会学やエスノメソドロジーなどのミクロ社会学ないし解釈的社会学の興隆を背景としている、と見ることができる。

 

  4.英国における社会調査研究・教育の二大拠点−エセックス大学とサリー大学−5)

                                   

 次に、筆者が在外研究にあたった英国において、社会調査の研究と教育をリードするエセックス大学とサリー大学に焦点を当てて、詳しく見ておくことにしたい。

 エセックス大学はロンドンの北東約60キロに位置するエセックス州のコルチェスター(Colchester)に、サリー大学はロンドンの南西約40キロに位置するサリー州のギルフォード(Guildford)に、それぞれ所在する。両大学とも、大都市ロンドンの近郊に位置し(ロンドン中心部からの電車での時間距離で1時間圏内に含まれ)1960年代中頃に創立された比較的歴史の浅い大学(国立)でありながら、国が実施している教育の質的評価や研究評価でトップレヴェルの評価を得ている。両大学の社会学科に関する研究評価としてはResearch Assessment Exercise(RAE)2001年の結果で、全英の社会学48大学中、最高の等級である5スターを獲得した6大学に共に含まれている。教育評価でも、Teaching Quality Assessmentの結果、24点満点中22(エセックス大学)21(サリー大学)と共にハイレヴェルのスコアを獲得している。社会学の研究と教育の両面で、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学以上の高い評価を受けている英国社会学界を代表する機関と位置づけることができる。そして、より重要な点は、共に社会調査の研究と教育に力を注いでおり、今日の英国における社会調査研究・教育の二大拠点と言い得ることである。

 筆者は、2000年3月末〜2001年3月末の1年間、サリー大学社会学科で客員研究員として在外研究にあたり、同大学を内側から観察し続けた。そこで、ここではまずエセックス大学を簡単に紹介した上で、サリー大学の取り組みや成果をやや詳しく見ておくことにしよう。

<A> エセックス大学

  エセックス大学社会学科は、現在、アカデミック・スタッフだけでも31名を数える英国でも最も大きな社会学科の一つである。スタッフには、British Sociological Association(BSA;イギリス社会学会)の現会長を務めるJhon Scott教授(社会成層研究)、邦訳もされているDocuments of Life, 19836)の著者として知られるKen Plummer教授(社会心理学/セクシュアリティ研究)、後述のQualidata(Qualitative Data Service)の創始者であり、最高責任者でもあるPaul Thompson教授(ライフ・ストーリーや口述の生活史の社会学的研究のパイオニア)、後述の社会・経済調査研究所(Institute for Social and Economic Research)の所長を務めるJoan Busfield教授(健康・病気の社会学)を始めとして、アメリカ、オーストラリア、イタリア、中国、日本(エスノメソドロジーや会話分析を専門とする田中博子氏)など世界各国出身の専任スタッフまで、グローバルで幅広い充実した陣容を誇っている。

 エセックス大学で特筆されるべきは、次のような2種類の社会調査データのアーカイブと専門の調査研究所を学科ではなく大学として持ち、運営していることである。同大学のサーバ上に置かれて世界中の研究者が利用している2つのデータ・アーカイブ、a)UK Data Archive (UKDA)b)ESRC(国立のEconomic and Social Research Council) Qualitative Data Archival Resource Centre(Qualidata)、エセックス大学とESRCが共同で創設したc)Institute for Social and Economic Research (ISER)がそれであり、いずれも社会学科のスタッフが重要な役割を担っている。

 このうちa)UKDAは、英国随一の社会調査データ・アーカイブであり、調査研究と教育のための主に量的データによる2次分析をサポートすることを第一の目的としている。ESRCやエセックス大学などによって1967年に開設され(以前は、ESRC Data Archiveとして知られていた)、現在では英国における学術的、商業的及び公的なセクターによって提供された4000以上のデータセット(マイクロデータ)が登録ユーザに公開されている。運営には、社会学、統計学、地理学、歴史学、政治学、図書館学、情報科学などヴァラエティに富んだバックグランドを持った約50人ものスタッフがあたっている。尚、BSAS(British Social Attitudes Survey)GHS(General Household Survey)BHPS(British Household Panel Survey)LFS(Labour Force Survey)FES(Family Expenditure Survey)のようなメジャーなデータ資源は、国立統計局(NS;National Statistics)などの中央政府によって供給されている。

 b)Qualidataは、UKDA内に収容された特別なユニットであり、社会科学的な質的調査データの獲得・普及と再利用のための国家的サービスを提供する機関である。サービス開始初期の1995年には100のデータ資源が設置されていたにすぎなかったが、Qualidataのカタログには2000年までに460の記録が収められるようになっている。収蔵され公開されているデータは、徹底した(In-depth)インタビュー、フォーカス・グループ、ケース・ノート、ミーティングの記録、日記と調査日記、フィールド・ノート、観察記録、パーソナル・ドキュメント、自由回答形式の調査票、半構造的なインタビューなどによる、テクストやオーディオ、ビデオ、写真などであり、デジタルのみならずアナログ形式のデータも取り扱われている。

 エセックス大学の特色は、このような量的及び質的な調査データのアーカイブや調査研究所が、社会学科と密接な関係を有しながらも大学全体として整備され、社会調査の研究と教育活動に幅広く活用されているということである。また、従来は量的データに偏していた2次分析の対象を、質的データにまで押し広げている点にも注目すべきである。

<B> サリー大

 これに対してサリー大学の場合は、社会学科が独自の機関を持ち、資源の提供を行っている。社会学科が、a)社会調査研究所(Institute of Social Research;ISR)を持ち、b)CAQDAS(Computer Aided Qualitative Data AnalysiS)ネットワーキング・プロジェクトを進め、c)The Question Bank(QB)を管理・運営し、社会調査専門のオンライン・ジャーナルであるd)Social Research Update(SRU)e)Sociological Research Online(SRO)の編集・発行にあたり、またf)社会調査者のためのデイ(ショート)・コースを実施するといった、社会調査に関わる研究と教育活動の主体となっているのである。

  a)の社会調査研究所は、エセックス大学のような物的基盤(独立した建物)を有しているわけではないが、b)CAQDASc)QBを共有資源とし、人的及び情報のネットワークを介して社会調査に関する研究活動を促進する学科の下部機構である。現にスタッフは、刑事司法、文化・アイデンティティ・エスニシティ、健康とライフコースの社会的分割、方法論の発展、環境社会学、ニューメディアとコミュニケーション・テクノロジーといった調査グループに別れ、学生・院生を巻き込んでアクティブな研究を押し進めている。

 b)CAQDASネットワーキング・プロジェクトは、ESRC(前述)によって創設されたプロジェクトであるが、サリー大学社会学科が実質的に担っており、質的データ分析のために開発されたソフトウェア・プログラムの幅広い利用にあたっての実践的なサポート、トレーニングやセミナーの開催及び情報の提供を行っている(ソフトや情報のネットワーキング)。同プロジェクトはまた、ソフトウェアの実際の使用によって浮かび上がってくる方法論や認識論上の論点に関する世界中の研究者のディベートのためのプラットフォームを供給している(研究者のネットワーキング)

 c)QB(Guy, 1999)は、CASS(Center for Applied Social Surveys)によって構築・管理されている多数の調査票のオンライン・データベースであり、正式名称をCASS Social Survey Question Bankと言い、サリー大学のサーバ上に置かれている。CASSは、NCSR(National Center for Social Research)とサウザンプトン大学そしてサリー大学の3つのホスト機関が共同で運営するバーチャルな組織としてセットアップされた、ESRCの資源センターである。QBの最高責任者には、NCSRRoger Thomas(CASSの所長)やサリー大学のMartin Bulmer教授(QBAcademic Director)らが務めている。このDBは、調査票やコードブックをPDFファイル形式もしくはHTMLファイル形式のフォーマットで公開しており、エセックス大学のUKDAのデータセットと合わせて用いることで利用価値が高まるようになっている。また、将来的には、資源の構成要素に添えられた付せんや説明、索引といったメタ・データ(Data about Data)も収蔵・管理する方向で、現在検討が進められている。

  d)SRUe)SROは、共に社会調査専門のオンライン・ジャーナルであり(季刊)、サリー大学のサーバ上に置かれている。1993年3月創刊のSRUはサリー大学社会学科が単独で発行し(編集長はNigel Gilbert教授)、毎号1本の社会調査関連の比較的短い論文が掲載され、2002年8月現在で第37号まで発行されている。1996年3月創刊のSROは、理論的・経験的・方法論的な議論に焦点を合わせた論文を毎号10本前後も掲載する本格的なオンライン・ジャーナルであり、2002年8月現在、第7巻第2号まで発行されている。SRUと違って、サリー大学社会学科が単独で編集・発行しているわけではないが、事務局が置かれているサリー大学が中心的な役割を担っている。

  f)の社会調査ショート・コースは、社会調査の専門家がスキルアップを図ったり、新しい技術を学ぶことを主目的として1981年にスタートして以来、実に20年以上の長きに渡って実施され、多くの受講生を獲得している。参加費用は、1日コースで£110(約2万円)、2日コースで£180(約3万2千円)となっており(フルタイムのドクターコースの大学院生には大幅な減額措置が取られている)、少人数を対象に実践的で質の高い講習を行っている。

  次に、学部学生向けのカリキュラムと卒論指導を見ておこう。特筆されるべきは、カリキュラムの中での社会調査関係科目の比重の高さである。1年次の必修9科目中3科目(Social Research Methods 1Quantitative Methods 1Computing for the Social Sciences 1)、2年次は必修4科目中3科目(Social Research Methods 2Quantitative Methods 2Computing for the Social Sciences 2)、選択6科目中1科目(Group Research Projects)、最終学年(仕事の現場に入って専門的な職業訓練にあたるProfessional Placement Periodを選択する場合は4年次、選択しない場合は3年次)は選択13科目中2科目(Aspects of Social Research MethodologyResearch and Evaluation)と、学科が用意している専門(必修・選択)科目合計32科目中、実に9科目(28%)が社会調査関係の科目で占められている。このうち、1・2年次のSocial Research Methodsでは量的調査と質的調査がバランス良く半分ずつに時間配分され、勿論社会調査の実習科目(選択科目として)も用意されている。また卒業論文は必修であり、研究にあたっては経験的な調査を実施することが強く求められる。卒論の手引きには、学生が採用すべき主たる調査戦略として、構造的でないないし半構造的なフェイス・トゥ・フェイスの徹底的な(In-depth)インタビュー、調査票調査、フォーカス・グループ、観察的ないしエスノグラフィックな調査、会話分析、ドキュメント分析、TV番組・映画その他の文化的産物の分析、量的データを用いた2次分析が列記されている。

  このような社会調査の重視を特色とするサリー大学社会学科のリーダーは、次の4人と見てよいだろう。1)1996年以来の学科長であるSara Arber教授は、1999-2001年の期間、イギリス社会学会(BSA)の会長職にあった。彼女は、高齢化やジェンダー、女性の雇用を専門領域とし、また先に紹介したDoing Secondary Analysis (1988)の共著者でもある。2)Martin Bulmer教授は、社会調査、人種とエスニシティ、社会学史を専門領域としており、上述のQBAcademic Directorの他に、Ethnic and Racial Studies誌やRoutledgeから刊行されているSocial Research Todayシリーズの編集者、International Sociological Association(ISA)の社会学史研究コミッティの副代表などを務めている。3)Nigel Fielding教授は、質的調査、質的データ分析へのコンピュータ・アシスト、犯罪、刑事司法、治安、逸脱を専門領域としており、先の取り上げたLinking Data(1986)の共著者であり、Howard Journal of Criminal Justice(1985 -1998)New Technologies for Social Research誌の編集者も務めている。4)前学科長(1989-1996)であるNigel Gilbert教授は、コンピュータを用いた社会学的アプローチ、2次分析、科学社会学、環境社会学を専門領域としており、サリー大学社会学科のスタッフが総力を上げてまとめた社会調査テキストResearching Socila Life(1993, 2nd ed. 2001)の編者、SRUの編集長を務めている。この4人を含めて、エセックス大学と同様、非常に充実したスタッフが揃っている。

 このように、エセックス大学とサリー大学社会学科は、今後の我が国の社会調査研究・教育のあり方を刷新していく上で、格好な良きモデルとなり得る機関であると言えよう。

 

 5.我が国の社会調査をめぐる課題と若干の提言

 

 最後に、以上を踏まえて、我が国の社会調査をめぐる課題を整理し、併せて若干の提言を行っておきたい。次の5点を指摘しておこう。

 1) 質的方法と量的方法との優劣論争に幕を閉じること

 2) データアーカイブの整備と2次分析の活性化を押し進めること

 3) 質的データ分析のための日本語版コンピュータ・ソフトの開発を推進すること

 4) Visual Research Methodsによる研究成果を蓄積し方法論を確立すること

  5) 社会調査士の制度化と社会調査教育の見直し・充実化を図ること

 1)に関しては、先に見たように英国では1980年代以降に脱「優劣論争」が活発化したが、我が国においてこうした議論が現実的なものになったのはせいぜいここ10年のことである。日本都市社会学会が、1994年度の第12回大会で「日本都市社会学における『社会調査』の系譜と課題」と題するシンポジウム(後藤, 1994)7)、1995年度の第13回会大会で「都市社会調査における質的方法と量的方法」と題するテーマ部会(大谷・後藤, 1996)と、2年連続で「社会調査」を大会の主テーマに据え、とりわけ13回大会のテーマ部会の副題に「優劣論争を越えるために」が掲げられたように、そこには「量的/質的のいわば『冷戦体制』」(佐藤, 1996, P.11)を終結させようとする意志がはっきりと示されていた。「シンポとテーマ部会の報告者9名と討論者3名の計12名」の多くが、「重点の置き所の違いや主張の濃淡はあれ、いずれもモノ(シングル)メソッドではなく量的−質的方法にまたがるデュアルないしマルチプルなメソッドを採るべきことを主張した」(後藤, 1996, P.19)のも決して偶然のことではない。その後、例えば石川淳志が「『量と質』『事例と統計』といった従来のごとき単純で不毛な(不幸な)対立の図式を乗り越え」ることが必要である(石川・佐藤・山田, 1998, p.iii)と説いたように、この流れは確実に大きくなっている。両方法の優劣論争の「無意味化」(佐藤健二)が果たされんとしている、と受け止めておきたい(後藤, 2000c)

 2)のデータアーカイブと2次分析に関しては、上述の通り、我が国の現状は欧米に比して概ね20年という大幅な遅れを取っている。SSJデータ・アーカイブSORDという先駆的な取り組みの意義は極めて大きいが、利用可能なデータセットはまだまだ少ない。英国のエセックス大学のUKDAとサリー大学のQBのように、マイクロデータと共に調査票も(可能であればメタ・データをも)合わせて利用できるような体制を整備する必要がある。また、エセックス大学のQualidataのような質的データのアーカイブは、手つかずの状況である。我が国には事例調査の戦前からの輝かしい蓄積がありながら、データはほとんど私蔵(死蔵)されてしまっている。多くの関係者が存命しているうちに、質的データ・アーカイブの構築を急ぐ必要があるだろう。

 さらに、最も大きな問題は、官庁データが2次分析にほとんど利用できない点である。「日本人口学会や人文地理学会が総務庁や統計審議会などに要望書を出し、研究目的の統計利用に対する学会としての組織的な対応を進めている」(後藤, 1995, P.35)が、「統計法」の壁は高いままである。国も、欧米の中央政府がマイクロデータの最も重要な提供主体の一つとなっていることの意味と重みを認識し、政策の転換を図るべきである。しかし当面、この現状を打開するためには、迂遠なやり方ではあるが、データセットを用いた2次分析による優れた研究を積み重ねると共に、多くの研究者が自らのマイクロデータを提供したり、データ・アーカイブの活用法や2次分析の方法を社会調査教育に組み込むなど、SSJデータ・アーカイブやSORD8)によって生み落とされた動きを積極的な姿勢でサポートし成果を上げていくことしかないのかも知れない。

 3)に関しては、佐藤郁哉(2002, pp.323-330)によれば、質的データ分析にも活用可能な「アイディア・ツリー」というソフトがあったり「野張」という名のソフトが試験的に開発されている程度で、日本語版ソフトはほとんど未開発の現状であると言う。コンピュータ・アシストによる質的データ分析の道が切り拓かれれば、先に示したように、非常に大きな力を発揮する。とりわけ、Grounded Theory Aprroachを可能とする日本語ソフトの開発と実用化が待望されるだろうし、その上で、サリー大学のCAQDASのようなプロジェクトを立ち上げていくことも必要になるに違いない。

 4)Visual SociologyVisual Research Methodsをめぐる動きとしては、近年、写真や映画フィルム、ビデオテープなどのマルチデータを使った成果が現れるようになっていること(山中編, 1993, 2002; 井上・木村・西山・福島・細谷, 1999; 伊藤・港編, 1999)が注目される。しかし、日本ではVisual SociologyOne Branch of Sociologyとしての確立もVisual Research Methodsの普及も、共にまだほど遠い。最近の代表的な社会調査テキスト(北澤・古賀編, 1997; 森岡編, 1998; 石川・佐藤・山田編, 1998; 大谷・木下・後藤・小松・永野, 1999)でも、「質的調査法への招待」をサブタイトルに持ち「映像データ分析」を「質的調査の技法」の一つとして簡単に紹介している北澤・古賀編(1997)を除いてほとんど取り扱われていない。その中で、大谷・木下・後藤・小松・永野(1999, pp.243-244)に掲載されている「写真を使った観察法の試み」と題するコラムでは、筆者が1994年度から取り組んでいる「写真で語る:『東京』の社会学」プロジェクトを取り上げ、「『集合的写真観察法』とも称されるこの試みは、社会調査の外延を広げる可能性を秘めている」と述べている。「集合的写真観察法」を「新しいVisual Research Method」と位置づけ、方法の一つとして確立させることが要請されるだろう(後藤, 2000a; Goto, 未発表論文)

  5)終わりに、日本社会学会が検討を重ねている「社会調査士」の制度化と社会調査教育の見直し・充実化について私見を述べ、本稿を閉じることにしたい。

 先に見たように、日本社会学会は「社会調査士に関する特別委員会」を設けて検討を重ねており、200211月の大会総会で学会案を提案し、2003年4月に認定機構を立ち上げ、2004年に資格認定を開始するという道筋を想定しているようである。現時点では学会ないし委員会案の中身がハッキリしていないが、2002424日発行の日本社会学会ニュースNo.175に掲載されている直井理事の報告によれば、「標準カリキュラムは、@現状との両立、A専門資格にふさわしい内容、B量的調査と質的調査とのバランス、を柱に検討を加えている。とくに、調査実習を加えるかどうかが論点となっている」とのことである。@の現状と両立するカリキュラムとは、全面的なあるいは大幅な改訂をしなくとも、多くの大学で実際に行われている社会調査教育で対応し得ることを意味するのだろう。しかしこの点は、多くの場合、AとBとは相容れないように思われる。「社会調査士」が、仮に社会調査の企画・設計(量的/質的調査を問わず、課題に相応しい調査方法の選択を含む)から報告書をまとめるまでの一連の調査プロセスを一貫してこなせる「社会調査(2次分析を含む)の専門家」と位置づけるならば、現行の学部レヴェルの社会調査教育では一部の大学を除いて実効性は低いと言わざるを得ない。また、量的方法と質的方法を一大学でバランス良く学ぶこともあまり期待できまい(社会学部/社会学科の社会調査教育は、量的方法に偏しているのが現状である)。とすれば、(i)学部における社会調査教育を全面的に組み直すか、(ii)学部と大学院修士課程との間に差別化を図ることを検討すべきである。

 筆者は、(i)のハードルの高さとの比較で、(ii)を選択する方が賢明であると考える。筆者の具体案は、以下の通りである。一定の要件を備えた大学の社会学部/学科(社会調査士資格認定機構」の指定を受けることが望ましいだろう)を卒業した学生には無条件に「認定社会調査士」(あくまでも上位資格取得のための基礎資格と位置づける)を与える。「一定の要件」を決めるにあたっては、社会調査(量的と質的方法を共に含む)リテラシー、情報リテラシー、コンピュータ・リテラシーの修得が鍵を握る。この点で、サリー大学のカリキュラムが参考になるはずである。しかし、専門職としての「社会調査士(ないしは専門社会調査士)」の資格を取得するには、1)「認定社会調査士」を有する者が大学院に進学して指定の科目を修得すると共に、実証的な(2次分析を含む社会調査の成果を入れ込んだ)修士論文を提出して修士号を取得すること、2)社会調査士資格試験を受験して合格すること(平均合格率は6070%程度に押さえる必要があろう)、の2条件を必須条件とする。つまり、一定要件を備えた大学院修士課程修了者でかつ資格試験の合格者をもって「社会調査の専門家」としての「社会調査士(ないし専門社会調査士)」の資格を授与する、ということである。さらに、社会調査士の仕事を継続するには、資格の発効日から一定程度の期間(例えば3年や5年)毎に資格更新のための社会調査(ないし社会調査士のための)ショート・コース(全国の拠点校で実施するようにする。サリー大学のショートコース・プログラムがモデルの一つとなろう)を受講することを義務づける。こうすることで、高度な専門職の育成(資格インフレの抑制にもつながる)と社会学部/学科並びに社会学専攻の大学院への進学の促進(受験生の獲得)が共に可能となり、また社会調査教育方法の絶えざる見直しと革新を促すことにもなるはずである。

  特別委員会で論点となっていると言う調査実習に関しては、社会調査士の専門性を踏まえるならば義務化すべきであろうが、調査の全プロセスの実習を1年間で完結させることが難しい現状を鑑み、学部段階では調査を経験する程度で良いのかも知れない。この場合、各種社会調査を実施する中央省庁や自治体、シンクタンクなど(認定機構が指定することが望ましい)と連携を図り、学生を調査員として受け入れてもらって現地調査を実習する(学生の実習先とする)制度の創設を提案したい(後藤, 2000b, pp.40-41)。優秀な調査員を確保することが年々難しくなっている統計調査を企画・実施する官公庁側の事情と、学生の調査実習の機会を確保することがこれまた年々難しくなっている大学側の事情とを重ね合わせると、双方の利害は容易に一致しよう。教職課程の学生たちが小中高校(現場)で教育実習を行い、学芸員課程の学生たちが博物館や美術館(現場)で実習を行うように、「社会調査士」を目指す学生たちが指定統計などの調査員として現場で実習を行う。中央官庁・自治体・シンクタンクと大学とのタイアップは、双方に益するところ大であり、こうした方策が模索されてしかるべきであると考える。

 以上、5点に渡って、我が国の社会調査をめぐる課題を整理し若干の提言を試みた。調査環境の悪化や方法論・認識論と現実とのねじれといった「社会調査の困難性の深化」という状況の中で、あるいは「社会調査士の制度化」という新たに迎えつつある局面において、社会調査の研究と教育のあり方を見直し再構築することは、我が国の社会学界にとって当面の最重要課題である。様々な提言や取り組みや議論が活発に展開されることを期待したい。

 

 

  1) 「社会調査士」は、日本社会学会だけでなく、いくつかの関連学会との連合資格が検討されているようである。しかし、日本社会学会の主導のもとに制度化が図られようとしていることは間違いなく、この意味で主に「社会学」による「社会調査」の「囲い込み」の試みと位置づけることができるように思われる。

 2) このうち、Strauss & Corbin(1997)には、GT法のバイブルと言われるGlaser & Strauss(1967=1996)の日本における翻訳者の一人である水野節夫が'On Some Characterristics of Contemporary Japanese Society'と題する論文を寄稿している。水野はまた、GT法を触媒として「事例媒介的アプローチ(Case-Mediated ApproachCM)」を編み出し、個人現象の社会学的分析を試みている(水野, 2000)

  3) このうち、Fielding & Fielding(1986)Taylor(2000)は米国で出版されたが、Fielding夫妻は後述の英国サリー大学に所属する英国人である。

 4) IVSAは初期の頃から機関誌Visual Sociologyを発行し続けたが、2002年からはVisual Studiesに衣替えされた。編集長には英国・リーズ大学のJon Prosser教授が務めており、彼は現在16人いるIVSAの役員の中で英国の大学に所属している唯一の人物であり(16人の所属機関の国別構成は、米国9人の他、英国・イタリア・カナダ・ベルギー・オーストラリア・ギリシャ・アイルランド各1人)、本稿でも引いているImage-based Research: A Sourcebook for Qualitative Researchers, 1998の編者でもある。

 5) 本節の記述内容は、特に断りがない限り、エセックス大学の場合はWebサイト、サリー大学の場合はWebサイト・大学の各種パンフレット・学生向けの履修用ハンドブックなど、公表されている情報源に主に依拠しているが、筆者がサリー大学において実際に見聞きして得た情報も用いている。

   各大学・学科及び関連機関のWebサイトのURLは、以下の通りである。

   <University of Essex> http://www.essex.ac.uk/

   <Department of Sociology at the University of Essex> http://www.essex.ac.uk/sociology/

   <UK Data Archive(UKDA)>  http://www.data-archive.ac.uk/

   <Qualitative Data Archival Research Centre(Qualidata)>  http://www.qualidata.essex.ac.uk/

   <Institute for Social and Economic Research(ISER)>  http://www.iser.essex.ac.uk/

   <University of Surrey> http://www.surrey.ac.uk/

   <Department of Sociology at the University of Surrey>  http://www.soc.surrey.ac.uk/

    <Institute of Social Research(ISR)>   http://www.soc.surrey.ac.uk/isr.htm

    <CAQDAS(Computer Aided Qualitaitive Data AnalysiS)Networking Project>   http://caqdas.soc.surrey.ac.uk/

    <The Question Bank(QB)>  http://qb.soc.surrey.ac.uk/

    <Social Research Update(SRU)>  http://www.soc.surrey.ac.uk/sru/

    <Sociological Research Online(SRO)>  http://www.socresonline.org.uk/

    <Day Courses in Social Research> http://www.soc.surrey.ac.uk/daycourses/dcindex.html

 6) 序文は、当時ロンドン大学教授であり、現在サリー大学教授となっているMartin Bulmer(後述)が執筆している。

  7) このシンポジウムが企画された重要な背景の一つとして、「調査活動を絶えず反省的に検討し、歴史的に再考察していく試み」(川合, 1989, p.4)としての「社会調査史研究」の興隆(川合, 1989, 1991, 1994; 石川ほか, 1994など)があったことを指摘しておきたい。

 8) SSJデータ・アーカイブとSORDWebサイトのURLは、以下の通りである。 

    <SSJデータ・アーカイブ>(東京大学社会科学研究所附属日本社会研究情報センター)  http://ssjda.iss.u-tokyo.ac.jp/

    <社会・意識調査データベース(SORD)>(札幌学院大社会情報学部) http://www.sgu.ac.jp/soc/sordhp/

 

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Plummer, K.(1983) Documents of Life: An Introduction to the Problems and Literrature of a Humanistic Method. London(UK): George Allen & Unwin. =原田勝弘・川合隆男・下田平裕身監訳(1991)『生活記録の社会学−方法としての生活史研究案内−』東京: 光生館.

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Prosser, J.(ed.)(1998) Image-based Research: A Sourcebook for Qualitative Researchers. London(UK): Falmer Press.

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Rose, G.(2001) Visual Methodologies: An Introduction to the Interpretation of Visual Materials. London(UK): Sage.

佐藤博樹・石田浩・池田謙一編(2000)『社会調査の公開データ−2次分析への招待−』東京: 東京大学出版会.

佐藤郁哉(1992)『フィールドワーク−書を持って街へ出よう−』東京: 新曜社.

佐藤郁哉(2002)『フィールドワークの技法−問いを育てる、仮説をきたえる−』東京: 新曜社.

佐藤健二(1996)「量的/質的方法の対立的理解について−『質的データ』から『データの質』へ−」『日本都市社会学会年報』14(特集:都市社会調査のデータと方法)、日本都市社会学会: PP.5-15所収.

Seale, C.(2000) 'Using Computers to Analyse Qualitative Data', in Silverman(2000): pp.154-174.

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山中速人編(1993)『ビデオで社会学しませんか』東京: 有斐閣.

山中速人編(2002)『マルチメディアでフィールドワーク』東京: 有斐閣.

 

(付記) 本稿は、慶應義塾大学大学院の川合隆男ゼミ(社会学専攻)において、2002717()に筆者が行った「社会調査の研究と教育をめぐる近年の動向 −主に英国と日本を事例として−」と題する特別授業の内容に大幅な加筆修正を施したものである。このような機会を与えて下さり、また適切なコメントをいただいた川合隆男教授・有末賢教授及び大学院生の皆さんに謝意を表したい。また本稿は、文部科学省の科学研究費補助金を受けての共同研究(基盤研究(B))「実践的社会調査教育方法構築のための実証的研究」(2000年度〜2003年度、研究代表者:大谷信介関西学院大学教授、研究分担者:木下栄二桃山学院大学助教授・小松洋松山大学教授・永野武松山大学助教授及び筆者)による研究成果の一部でもある。 (2002年8月20日記)