中森 広道 教授
Q1.なぜ社会学で災害を研究しようと思ったのですか。
A.静岡県で育った私は、小学生の時に「伊豆半島沖地震」(1974年)を経験し、将来は地震学者になりたいと考えるようになりました。その4年後の「伊豆大島近海の地震」(1978年)の際、静岡県が「まだ余震が続くかもしれないから気をつけてください」と呼びかけたことが、いつの間にか「大きな地震が来る」という流言になって広がるという騒ぎが起こりました。その後「余震情報パニック」と呼ばれるこの騒ぎを経験して、地震自体よりも、地震によって人々がどんな対応をするのか、災害時の情報を人々はどう受け止め、メディアはどんな役割を果たすのかといったことに強く関心を持つようになりました。大学では、このようなことを専門的に研究したいと思い、社会学を学ぶことにしました。

Q2.研究の中で、印象に残っているエピソードは何ですか。
A.被災地での調査で経験した様々な出来事と、私が独自に研究した成果に反響があったことです。私は、大学院生の頃、社会学・社会心理学からの災害研究を進めていた東京大学新聞研究所(当時)の廣井脩先生のもとで研究をしていました。廣井先生の研究グループは、現地調査をよく行っていましたので、多くの被災地を訪れました。大学院生時代に印象に残るものとして、津波により北海道の奥尻島や渡島半島で大きな被害が生じた1993年の「北海道南西沖地震」があります。地震だけでなく津波についても詳しく勉強した災害でした。それまで私は、災害と情報・メディアを中心に研究をしていたのですが、この地震で、災害時の人々の避難や意識についても考えるようになりました。また、災害研究は人命を救うことに直結するものだと実感し、その後の研究の姿勢や取り組み方が大きく変わりました。そして現在まで、「阪神・淡路大震災」や「東日本大震災」はもちろんのこと、台風・豪雨なども含めたその後の主な災害の調査・研究に、何らかの形で携わっています。
私の独自の研究としては、2007年に本運用(一般の人々への発表)が始まった「緊急地震速報」の調査です。最初に実施した学生を対象に行った調査で、この速報に対するイメージや考え方が思った以上に様々でした。そこで、全国を対象とした調査を行って、この速報に関する人々の意識や評価を検証し、この速報を適正に活用するための課題を考えていきました。この研究に様々な方面から反響があり、実際にこの速報を運用するためにも活用されたようです。

Q3.高校生へのメッセージはありますか。
A.社会学は、身近なことから世の中に関わるものすべてが対象になると言っていいでしょう。私は、災害、情報、メディアなどを対象にしていますが、社会学の特徴は、何を対象にするかというよりも、対象になったものを、どう分析して考察していくのかというところにあります。日本大学文理学部社会学科に入学したら、先生方や学生たちが、それぞれの関心について、どのように捉えて、どのように分析しているのかという「方法や手段」を授業や大学生活を通して学んでください。そして、皆さんそれぞれが興味を持っていることについて、皆さんが身につけた「方法や手段」を使って分析し、この世の中を、この社会を考えてみてください。