香港カンフー映画にみる「自己表象」

今回の講義に関するメッセージ

視聴覚メディアは情緒に直接訴えかける強い力をもっています。たとえば、現在のマス・メディアでは中国に関するマイナス・イメージが刺激的な映像と共に多く登場し、人々はそれによってきわめて情緒的に「中国は嫌い」という方向に流されがちです。でも、マス・メディアに登場するイメージは、その都度あるメッセージを伝達するために「構成」されたものです。誰しも、自分が直接知らない対象については、大量に出回っているイメージに影響されやすいものですが、情緒が動かされたのなら、なおさら、なぜそのイメージによって自分の情緒が動かされたのか、ちょっと立ち止まって考えてみてください。そのイメージは、誰によって、誰に向けて、どういう文脈で「構成」されているのでしょうか。そのイメージからは何かが意図的に消されている可能性はないでしょうか。国家間の関係を考える際にも、ジェンダーの問題を考える際にも、情緒に訴えかけるイメージを論理的に読み解く力は、今日ますます重要になっていると思います。

先生の研究テーマは?

植民地期の台湾で、支配者の立場にあった日本人は映画という視聴覚メディアをどのように用い、どのようなイメージを取り除き、どのようなイメージを広めようとしていたのか。台湾の人々は、それをどのように受け止めていたのか、といったことを修士課程では研究しました。博士課程では、植民地統治下の台湾から離れ、上海や重慶へと越境した台湾出身の映画人の紆余曲折に満ちた活動の軌跡を研究しました。現在は、台湾における国民党政権による映画統制や、台湾・香港・シンガポールの反共映画人ネットワークの形成など、冷戦期にも関心を広げています。

なぜこの研究を始めたのでしょうか?きっかけは?

台湾ニューシネマの傑作と呼ばれる『悲情城市』や『クーリンチェ少年殺人事件』に強く惹かれ、そこから台湾映画の歴史に興味をもつようになったのがきっかけです。

先生の小さいころの夢は何ですか? また、その夢と今、現在のギャップは?

本を読むのが好きだったので、小さい頃は小説家に憧れました。 いまは、研究者としてさまざま史料を集め読解するなかで、時間の流れのなかに埋もれた声に耳を傾け、知られざる過去の「物語」を論文という形にしています。小さい頃には思いもよらなかった形で「物語」を伝えていることになるのかもしれませんね。

先生のご出身地は? & 故郷自慢をお願いします!

大阪生まれですが、記憶のないうちに東京に引っ越してしまったので、残念ながら故郷自慢できるようなエピソードがありません。

ご趣味・特技はありますか?

趣味は読書や映画鑑賞ですが、いまや仕事の一部でもあります。

好きな音楽はありますか?

特にこだわりがないので、PCでの単純作業の時にはYouTubeで各国音楽を視聴したりします。論文執筆で集中したいときは、バッハやモーツァルトをよく聴きます。

どのように休日を過ごされていますか?

まとまった休日があれば資料調査のために海外のアーカイブに出張に行くことが多いのですが、出先での食べ歩きは楽しみのひとつです。

プロフィール

三澤真美惠 Mamie Misawa
[学歴]
東京大学 大学院 総合文化研究科 地域文化研究専攻 博士後期 単位取得満期退学 国内 日本
台湾大学 歴史学研究所 博士前期 修了 国外 中華民国(台湾)

[学位]
学術博士 東京大学
歴史学修士 台湾大学

[研究分野]
地域研究 東洋史 映画研究

[研究キーワード]
台湾 映画 歴史 植民地主義 帝国主義 脱植民地化

[著書]
『「帝国」と「祖国」のはざま――植民地期台湾映画人の交渉と越境』 東京:岩波書店 2010/08/26
『在「帝國」與「祖國」的夾縫間--日治時期台灣電影人的交涉和跨境』 台湾大学出版中心 2012/04
『殖民地下的<銀幕>――台灣総督府電影政策之研究(1895―1942年)』(単著) 台北:前衛出版社 2002/10
「中国語圏映画人」の項目執筆・編集委員『世界人名辞典』 東京:岩波書店 2013/12