「方言」から読み解く日本語社会

今回の講義に関するメッセージ

今そうなっていることを当たり前と思ってやりすごしていることが、じつはいろいろな背景をもつものであるということを身近な日本語を通して感じてほしいと思います。 ふだん使い慣れている日本語も、じっくり観察してみると意外なことがわかってきます。たとえば、ドラマのセリフにどのような方言がどのように使われているのかということをたどることによって、日本語社会における方言の価値の変遷が浮かび上がってきます。今でこそ方言は「誇らしいもの」「かっこいいもの」「楽しいもの」というポジティブな価値をもつものとなっていますが、以前はかならずしもそうではなかったのです。その背景には国家の政策や教育のあり方、メディアと社会との関係などさまざまなことがからみあっています。このような社会とことばの関係性について考える分野のことを社会言語学と呼びます。また日本語のありようについてみていく研究分野のことを日本語学と呼んでいます。

先生の研究テーマは何ですか?

日本語学です。とくに現代の日本語について、そのありかたと背景を探るというスタンスで研究しています。社会との関係からみていくことが多いので社会言語学という分野ということもできると思いますし、リアルな日本語はすべて方言なので方言研究ということもできます。発音やアクセント、イントネーションにも関心があるので、音声研究ということもできると思います。対象はなんでもよくて、というと節操がないように聞こえると思いますが、自分自身が「おっ」とひっかかったものを研究のとっかかりとしています。

なぜこの研究を始めたのでしょうか?きっかけは?

今まさに目の前で起こっていることがどのようなことで、どうしてそのようなことになっているのか、そして将来はどうなっていくのか、ということを考えるのが性に合っているというか好きなのだと思います。学部を卒業して最初に就いた職業は新聞記者でした。新聞記者は世の中で起こるさまざまなことを通して今を浮き彫りにする職種だと思います。規模は縮小しても、もう少し深く長く考えてみたいな、ということで、「ことば」に特化してみた、その結果が現在の職業につながったというところかな、と思います。

先生の小さいころの夢は何ですか? また、その夢と今、現在のギャップは?

マンガ家兼新聞記者。
マンガは学部生時代にちょっとした賞をもらいましたが、結局才能がなくいまや読む専門になりました。しかし、新聞記者は経験させてもらって今に到る、ですし、記者も研究者も取材や調査や実験をしてそこから結論を導き出していくということは基本同じではないかと自分は思っているので、あまりギャップは感じていません。

プロフィール

田中ゆかり Yukari Tanaka
日本大学文理学部国文学科教授。博士(文学)。1964年・神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業ののち、読売新聞社(記者職)に約3年勤務。その後、早稲田大学大学院文学研究科に進学、同大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。早稲田大学文学部助手、日本学術振興会特別研究員(PD)、静岡県立大学国際関係学部専任講師などを経て、2006年度から現職。著書に『「方言コスプレ」の時代―ニセ関西弁から龍馬語まで―』(2011年、岩波書店:2012年3月(財)高知市文化振興事業団「第22回高知出版学術賞」受賞)、『首都圏における言語動態の研究』(2010年、笠間書院)など。

フォトギャラリー

「じぇじぇじぇ」発祥の地にて!

「フィールドワーク入門」(国文学科2年生以上配当科目)による方言調査風景(調査票の清書&データ整理)

「フィールドワーク入門」(国文学科2年生以上配当科目)による方言調査風景(諸連絡)

調査風景(インタビューによる方言調査風景)

田中ゼミ恒例の卒業論文発表会後の集合写真

2013年度卒業生の川村菜々生さんによる似顔絵。巻物×侍キャラ?!