日本大学英文学会  

月例会報告

 *2007年度

★ 1月例会 研究発表 (平成20年1月12日)
  
  [司会] 野呂 有子 (文理学部教授)
  
  [発表者]

    1. 秋葉 倫史 (博士後期課程1年)
        古英語の‘have+目的語+過去分詞’と完了形の発達要因について
        ~四福音書を資料として~

    2. 上滝 圭介 (博士後期課程1年)
        『夏の夜の夢』試論2 ―tricksterのlibidoについて―

 

  [梗概]

1.古英語の‘have+目的語+過去分詞’と完了形の発達要因について
      ~四福音書を資料として~

                                   秋葉 倫史(博士後期課程1年)

現代英語(PE)の完了形は古英語(OE)の‘have+目的語+過去分詞’の構造から発達したと考えられている。OEのこの構造において‘have’は本動詞で所有の意味を表し、過去分詞は目的語を修飾する形容詞である。対してPEの完了形は‘have’が助動詞として機能し、過去分詞が本動詞として扱われている。本発表ではこの‘have+目的語+過去分詞’と完了形の関わりについて通時的に見ていく。
 資料として聖書の四福音書を用いる。OEの四福音書から‘have+目的語+過去分詞’構造の例を抜粋し検証する。はじめに、OEのこの構造について実際のデータから見られる特徴を述べる。その後、完了形の発達要因について考えていく。主に‘have+目的語+過去分詞’構造が持つ完了とその他の使役、受身等の意味の相違について焦点を当て検証することにより、どのようなコンテクストから完了形が発達したのかを考察する。

 

2.『夏の夜の夢』試論2 ―tricksterのlibidoについて―

                                   上滝 圭介(博士後期課程1年)
 

妖精パックが中心に据えられた『夏の夜の夢』本編は「生への欲動(=エロス)」を強く感じさせる喜劇であるのに対し、機屋ボトムがパロディ化する劇中劇「ピラマスとシスビ」は、もとは恋人同士が誤って自決してしまうという「死への欲動(=タナトス)」の色濃い恋愛悲劇です。後期のフロイトがlibidoを上記の二種類のように分類したのは、libido一元論の立場で「原型」の概念を導入したユングと袂を分ってからでしたが、両者に共通して「神話」に生の類型を求める点はそっくりですし、たとえばフロイトがプラトンや「涅槃原則」を持ち出し、かたやユングは「マンダラ」や「虹色の全体性」などと言う点も類似します。劇本編は森のシーケンスの混乱と収束、そして劇中劇の混乱を挟みながらも大団円で終幕となりますが、その間の2人のtrickster的人物、パックとボトムの動向をフロイトとユングの用語とともにみていく、というのが本発表の骨子です。

 

★ 11月例会 研究発表 (平成19年11月24日) 

  [司会] 寺崎 隆行 (通信制大学院教授・経済学部教授) 

  [発表者] 

    1.亦部 美希 (博士後期課程3年)
       The Unarmed Prophet―Henry Ⅵに見るMachiavelli思想

    2.水口 俊介 (日本大学中学校・高等学校教諭)
       認知言語学からみた学校英文法 ―動詞の用法を中心として―

 

  [梗概]   

 1.The Unarmed Prophet―Henry Ⅵに見るMachiavelli思想 

亦部 美希(博士後期課程3年)                    

マキアヴェリ著『君主論』は、イギリス・ルネッサンス時代に影響を与えたと考えられている。同時代の作品、シェークスピアの『ヘンリー六世』に、『君主論』との共通点を伺い知ることができる。ヘンリーは正義を重んずる軍備なき国王であり、劇中でキリスト教的預言者‘prophet’と呼ばれる。しかし、彼が「愛され、かつ、恐れられる」という政治的能力が欠如していることを、臣民クリフォードは語る。『君主論』第17章には、君主の政治的資質について、“My view is that it is desirable to be both loved and feared”、第6章には、“all armed prophets succeed whereas unarmed ones fail. ”とある。両章に、臣民に恐れられていない、軍備なき「預言者」Henryの破滅の理論が現出している。上記共通点について、両作品の関連性を分析する。

 

 

 2.認知言語学からみた学校英文法 ―動詞の用法を中心として―

水口 俊介(日本大学中学校・高等学校教諭)

学校英文法では、動詞の現在時制、動詞の現在形の意味・用法を次のように扱っている。
(1)Betty seems to be sad.(現在の状態)
(2)His son goes to a famous school. (現在の習慣)
(3)Snow falls in winter. (一般的真理)
(4)I name this ship the Queen Elizabeth.(現在の行為――遂行動詞)
(5)Our train arrives at ten. (未来に起こる事柄)
(6)When spring comes, the cherry trees will blossom. (時・条件を表わす副詞節中)
(7)LIONS WIN VICTORY!(新聞の見出し)
(8)The center fielder catches the ball. He throws it to the home plate. (実況中継など)
(9) The battle began. The soldiers in front advance and throw grenades into the trenches of their enemy. Immediately after them heavy tanks attack with their main guns.(歴史的現在)
                                    (フロンティア英文法 研究社)


  一見すると、多様な意味が存在するようにも見られるが、本発表では、それぞれの意味を横断するかたちで、英語話者に共通した認知的基盤・動機付けが存在することを確認し、認知言語学の観点から動詞の単純・現在形(現在時制)を中心に考察を試みたい。基本的には、Langacker(1987、1991など)のDynamic Usage Based Model, Bybee(2007など)のFrequency Model,池上(2003,2004,2006など)の主観性、水口(1993,1995など)の認知の程度(特殊化の程度)を基調に論を進め、subjectification, type-frequency, token-frequency, figure-ground, degree of specialization等の認知言語学的道具立てを縦横無尽に駆使して、英語動詞の単純・現在形(現在時制)の認知的メカニズムを紐解き、その動機付けを論じることになる。構造は単純に見える動詞の現在形(現在時制)を用いた構文には、複雑かつナイーブな認知基盤が存在していることを見ていくことになる。しかし、理論による理論の議論というよりはむしろ、実例に即しながら、学校英文法への寄与を念頭において具体的かつ実用的な話を心がけたい。


 

★ 10月英語学シンポジウム (平成19年10月20日)

  [司会]  塚本 聡 (文理学部准教授) 

  [シンポジウム]  『語をとらえる』    

 [梗概]  

         司会 文理学部准教授 塚本 聡

はじめに

 中学、高校を通して英語を学習する際には、名詞、冠詞や動詞など品詞についての言及があり、また、辞典にも当然のごとく品詞区分が記載されている。例えば、ウィズダム英和辞典(第2版)によれば、以下の10品詞が提示されている。

   名詞 形容詞 動詞 副詞 前置詞 接続詞 助動詞 間投詞 代名詞 冠詞   (vii

 ともすれば、品詞の決定は辞典に記載されていることから、自明のものであるかのごとく扱われる傾向が強い。しかしながら、そもそも品詞とは何かという根本的な事柄について議論される機会が少ないのが現状である。

 本シンポジウムでは、現行の8品詞論を出発点に、伝統文法、認知言語学、音声学の3つの異なる観点から、品詞区分の持つ妥当性、問題点について議論を行う。通常、自明のごとく使われる品詞区分の持つ意味について再考することをねらいとする。

 

  [発表者] 

1.「統語的働きに基づく語の分類」

聖徳大学准教授 山岡 洋

この発表では,これまでの伝統的な品詞分類に疑問を投げかけ,特に,語順・主要部・補部・付加部・主部・述部など統語レベルの基準による英語の品詞分類を提案する。最終的には,人間の言語知識の一部として,語の統語的働き(=品詞)がどのように捉えられているのかという疑問の解明を目的として,英語の品詞分類を再考し,主部になれるかどうかの素性[±subject]を基準として品詞の二分法を提案する。

 

2.「名詞と形容詞の概念的特徴」

文理学部講師 井上悦男

WierzbickaThe Semantics of Grammarの論考を踏まえ、他の文法カテゴリーとの意味的な対立を手がかりに、名詞という文法カテゴリーに固有の意味を探ることを目的とする。動詞や形容詞との間に常に意味的な対立が生じるとは言い難い。しかし、対立が潜在化した場合には、ある表現が名詞として実現されることに一定の価値があると考えられ、そういった現象の中にこそ、言語主体の認識のありようの差が反映されていると思われる。

 

3.「音声実現形としての語の特徴」

経済学部准教授 中村光宏

伝統的音声学における内容語と機能語という区別を出発点とし、それぞれのグループに分類される語の音形を、調音器官の制御とプロソディの観点から特徴付けることを試みる。エレクトロマグネティック・アティキュログラフ(electromagnetic articulographEMA)を用いて観察・分析した予備的実験結果に基づき、内容語と機能語に対応する調音運動の時間的・空間的特徴を検討する。そして、先行研究で報告されている事実と照合しながら、話しことばの理解過程における音声特徴(プロソディに対応した調音動作の規則的変動)の機能について考察を進める。

 

★ 9月アメリカ文学シンポジウム  (平成19年9月29日)

    [シンポジウム] アメリカ文学を 「食べる」 視点から読む

    [司会]  深沢 俊雄 (聖徳大学教授)

    [発題者] 

1. Moby-Dick “Stubb’s Supper”―鯨の捕食と被食をめぐる断想

文理学部教授 高橋 利明

人間はものを食べなければ生きてゆけない。生きるために人間は種を蒔き、家畜を飼い、漁猟を行うのである。このように直接的に自然に働きかける第一次産業こそが、食物連鎖の最上部にいる人間を根底から支えていることは、忘れがちな事実である。そして、食うか食われるか、つまり、生きるか死ぬかという生きとし生けるもの全ての生存競争原理の根源的な位相を端的に物語るものとして、Herman Melville Moby-Dick(1851) 64“Stubb’s Supper”は、注目に値する。

 西洋近代の捕鯨が求めたものは、主に家々のランプを灯す鯨油であったのであり、現代で言えば石油などの化石燃料に替わるものであったのだ。従って、Ahab船長率いるPequod号の二等航海士Stubbが、好んで鯨肉を食べたということは、異例中の異例であったのである。この作品内に描かれた「美食家」(“a high liver”)スタッブの「食べる」ことをめぐる異例と鮫たちによる鯨肉の捕食について考察することによって、人間にとっての「食べる」ことの普遍的な意味、即ち、人間と自然(あるいは、神)との捕食と被食の関係性を探究したい。

2.「食」と効果―The AmericanThe Great Gatsby 

通信制大学院教授・経済学部教授 寺崎 隆行

 「食」には常に両極のイメジが付きまとう。「食うか、食われるか」からくる「弱肉強食」「貧富」の世界のイメジと、「食卓を囲む」「食事を共にする」からくる人間関係の円滑さ・和やかさ・団欒のイメジである。

たとえばR. ChaseHenry JamesThe AmericanS. Fitzgerald The Great Gatsbyの共通点と相違点を次のように述べる。

 『アメリカ人』のC.ニューマンはギャッツビーに比べると穏やかで強情なところが少なく、ギャッツビーほど自分の運命を重視していない。 ・・・ニューマンは読者に訴えるものを持ってはいるが、一個の風変わりなでくのぼうみたいな人間にすぎないが、これに反してギャッツビーは悲劇的な無謀さと、人の記憶に永く止まる鮮やかな宿命観を持っている。

 この発表では、両作品に描写される「食」を分析することによって、それら描写がいかに作品効果を与えているかを考えてみたい。

 

3.The Grapes of Wrath に見る「食べる」ことの意義

聖徳大学教授 深沢 俊雄

 

4.Beloved ―「食べる」、「食べさせる」という関係からの考察

文理学部講師 茂木 健幸

「何らかの方法によって食物を獲得し、それを自らが食す、さらに他者に分け与える。」という食のつながりは人間にとって自然な営みといえる。アフリカンアメリカ人の奴隷経験とそこから続く世界を扱ったBelovedにおいて、この食を与える、与えられるという関係を考察する。

豚を盗んだことを問い質すSchoolteacherに対して、Sixoは「自分が豚を食べることで主人ために働くことが出来き、主人に新たな食が与えられる」という論理から盗みではないことを主張する。この言葉の中では、奴隷である自分も主人である白人を含む食の連鎖に組み込まれている。しかし、支配階級である白人のSchoolteacherは労働力である黒人が自分たちの食の連鎖に入ることを認められない。黒人たちは、食を巡る関係においても周辺へと追いやられているのであり、常に食を与えられる側に位置させられる。自らが食を得る、さらにそれを与えるという主体となることが否定されている。

主人公である元奴隷Setheがそのような状態から回復するには、同じ境遇を知る黒人コミュニティの助けによる。飽くこと無くSetheの過去の物語と食事を求めるBelovedによって疲弊させられたSetheに食を与えるのであるが、その行為によってSetheは食のつながりの中に位置を得るのである。

 

★ 6月例会 研究発表 (平成19年6月23日)

  [司会]  関谷 武史 (文理学部講師)

 [発表者] 

 1.小山 誠子 (文理学部講師)
   Venus and Adonis 再考

 2.吉良 文孝 (文理学部教授)
   Used to Would をめぐる問題

 

★ 5月例会 研究発表会 (平成19年5月12日)

 [司会]  福島 昇 (生産工学部教授)

 [発表者] 

 1.角田 裕子 (博士後期課程1年)
   Oliver TwistにおけるNancyの役割

 2.田中 竹史 (博士後期課程3年)
   A lexical semantic argument 
                   for "transform" approach to dative alternation

 

★ 4月例会 研究発表会 (平成19年4月21日)

 [司会] 保坂 道雄 (文理学部教授)

 [発表者]

 1.堀  紳介 (博士後期課程1年)
   Dinah MorrisとHetty Sorrel:
   二人の性の力とAdam Bedeにおける社会的権力

 2.佐藤  勝 (理工学部准教授)
   主語機能の補文の差異について―通時的研究―

 

 

 







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