物性物理化学 浅地研究室

NQR(核四極共鳴)や固体広幅NMRを用いて、固体中の分子・イオンの電子状態やこれらの運動についての情報を手掛かりにして強誘電性、強磁性などの物性や構造変化の原因や仕組みについて研究しています。

研究テーマ

水素結合系有機誘電体の物性と動的構造

NQR周波数は原子核の周囲の電荷分布に敏感です。そこで、共鳴周波数から分子の電子状態について情報を得ることが出来ます。室温付近に強誘電相転移点を持つ有機強誘電体Phz-D2caについて、プロトン移動は強誘電相では未完であり、より低温になって初めて起こることが示されました。

水素結合系有機誘電体の物性と動的構造

下の図は14N 核四極結合定数 e2Qq / h と非対称定数ηの温度変化を表わしています。Tc = 286 K は常誘電相から強誘電相への相転移に対応しています(重水素化率約 60 % )。T = 188 K 以下では窒素原子の電子状態に大きな変化が生じることが判ります。フェナジン分子中の二つの窒素原子のうちの一つにプロトンが付加していると予想されます。

水素結合系有機誘電体の物性と動的構造

(文献1)T. Asaji, J. Seliger, V. Zagar, M. Sekiguchi, J. Watanabe, K. Gotoh, H. Ishida, S. Vrtnik, and J. Dolinsek, J. Phys.: Condens. Matter 19 (2007) 226203(10pp).

構造・物性における同位体置換効果

同位体は化学的性質がほとんど同じですが、ときとして同位体置換により物質の性質に大きな差異が現れることがあります。水素イオンを重水素イオンに置換すると、分子イオンの構造だけでなく結晶構造も大きく変化する例が見出されました。下の図は同位体置換による水素結合二量体陽イオンの構造変化を示したものです。水素イオンによって橋架けされた二量体イオン(上)は対称心を持つ構造ですが重水素イオンによって橋架けされた二量体イオン(下)では対称心が消失します。

構造・物性における同位体置換効果

(文献4)T. Asaji, F. Tajima, and M. Hashimoto, Polyhedron, 21, 2207-2213 (2002).

軽水素を重水素に置換したアンモニウムイオンの運動状態(運動の速さや活性化エネルギー)には少なからぬ差異があります。下の図は35Cl NQR のスピン格子緩和速度の温度変化を通して間接的にアンモニウムイオンの運動を見たものです。同位体置換による運動状態の変化が構造相転移の有無を決定するような劇的な場合も報告されています。

構造・物性における同位体置換効果

(文献)T. Asaji, Solid State Communications, 115, 543-546 (2000).

極性有機分子イオンの秩序・無秩序相転移

分子配向の秩序度に応じて、分子の再配向のポテンシャルが徐々に温度変化する場合(曲線 b, c, d )には比熱のブロードなピークが明瞭に観測され、これを解析することによりポテンシャルの温度変化が議論できます。

極性有機分子イオンの秩序・無秩序相転移

(文献5)H. Fujimori, T. Asaji, M. Hanaya, and M. Oguni, J. Thermal Analysis and Calorimetry, 69, 985-996(2002).

極性分子イオンの配向の秩序化は複雑なプロセスを伴う場合があります。 NQRは固体中の分子の集合状態の微妙な変化を捉えることができます。下の図に示したNQR周波数の温度変化はいわゆる正常‐不整合‐整合相転移を経て秩序化が進むことを示唆しています。

極性有機分子イオンの秩序・無秩序相転移

(文献2) T. Asaji, J. Watanabe, E. Akiyama, H. Fujimori, and M. Oguni, Solid State Communications, 137, 488-491 (2006).

物質の遠隔検出へのNQRの応用

窒素原子を含むプラスチック爆薬や麻薬の遠隔検出に14N NQRを応用する方法が研究されています。FID信号の減衰時定数T2*よりも短い繰り返し時間で、共鳴周波数から少し外れた高出力のRFパルスを連続的に照射(SORCパルス系列)するとき、強い信号応答が観測される事実がNQR法による迅速な検出が有望視されている所以です。この現象は物理学的にも大変興味深いものです。我々はヘルムホルツ型コイルやアルキメデススパイラル状の平面型コイルを用い、離れた被検試料からのNQR信号を検出するための装置開発、ならびにマルチパルス系列への核スピン系の応答について研究しています。

物質の遠隔検出へのNQRの応用

物質の遠隔検出へのNQRの応用

有機一次元細孔内の分子の運動に伴う相転移

一次元細孔物質に包接させた分子の示す相転移的挙動を、NMRやESRを用いながら、分子運動という観点から調べています。

有機一次元細孔内の分子の運動に伴う相転移

図:CLPOT細孔内のTEMPOおよびTEMPOL分子の示すESRスペクトル。両者の分子配向や運動状態が異なることがわかる。

STAFF

浅地 哲夫
教授 浅地 哲夫 Tetsuo Asaji
Email asaji chs.nihon-u.ac.jp
Office 本館 7階 07130室(化学706室)
研究室HP http://www.chs.nihon-u.ac.jp/chem_dpt/lab/asaji/index.html
研究業績等 http://kenkyu-web.cin.nihon-u.ac.jp/Profiles/32/0003166/profile.html
1974年 名古屋大学理学部化学科卒業
1979年 名古屋大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学
1979年 名古屋大学理学部助手
1981年 理学博士(名古屋大学)
1983年 ダルムシュタット工科大学(ドイツ連邦共和国)共同研究員
1993年 日本大学文理学部専任講師
1994年 日本大学文理学部助教授
2000年 日本大学文理学部教授

所属学会
日本化学会、日本物理学会